元勇者三部作。(挨拶
小説家になろうで完結済みのオリジナル現代ファンタジー小説。本作は同作者による「元勇者」シリーズの1作目。3話しかない短編で、異世界で18年間勇者をやって現代日本に帰ってきた男の物語。
ここ数日、面接の夢ばかりを見る。
職を求めて門戸を訪ねてもことごとく門前払いになっているのが原因だ。
不安が門脇完爾(かどわき かんじ)の深層心理までもを蝕み始めている。
あまり大きな声で言えることではないが、完爾は15歳の時におおよそ18年間に渡って異世界に召喚され勇者の任に就いていた。
どうにかしてこちらの世界に帰ってきたはいいものの18年間も行方不明になっていたのでは学歴も職歴もつきようがない。
そんなわけで完爾は今朝も面接の悪夢に魘されて目を覚ますのだった。
現在、完爾は姉とその息子と3人で暮らしている。両親は異世界に行っている間に自動車事故で他界してしまっていた。
日中は甥を保育園に連れて行ったあと家事をしながら履歴書を書き、ネットなどを通じて面接の予約をする。
それが、元勇者の現代日本での生活だった。
本作は短編として完結した作品でありながら、元勇者三部作における導入部のような小説になっているので紹介も軽めに。
異世界からの帰還系小説は色々あるが、本作の特徴として異世界に行っていた期間が18年とかなり長い。
高校生から大学、社会人としての最初の時期を丸々失っていることと同義であり、これは現代社会においてはかなり致命的なハンディキャップになっている。
なにせ学歴・職歴もない上に18年間失踪していて、しかもこの18年間のことを説明できないのだ。
一応記憶喪失、ということで通しているがそのことを面接で説明したところで雇ってもらえるかどうかはお察しである。世知辛い。
本作の終わりは三部作の最後の作品にして本編へと繋がっていく。
小説家になろう 異世界で魔王を倒してきた元勇者ですが、こちらに戻ってきても就職口がありませんでした。