思い出を明日に持ち越せないのなら(挨拶
ハーメルンで連載中のぼっち・ざ・ろっく!の二次創作で、主人公の後藤ひとりが事故によって前向性健忘を患っているという設定の中編。
後藤ひとりには記憶障害がある。
高校入学の三日前、交通事故に遭ったひとりは脳に強い衝撃を受けて脳外傷を負った。
端的に説明すると今のひとりは「睡眠を取るとその日の記憶を忘れてしまう」状態にあるらしい。
らしいというのは彼女自身その事故に遭った記憶は全くないし、この状態になってからすでに一か月半経過しているということも自覚がないし、なんならこの説明も記憶できないので毎朝母親に説明してもらっている。
この状態が一生続くのかというとそうではなく、リハビリを繰り返すことで回復は見込めるそうだ。
そのリハビリの一環としてノートにその日あったことを書いているのだが、筋金入りのぼっちなひとりはノートに記されている内容が薄いことに「自分は何一つ変わってない」などと感想を抱いていた。
だが最新のページ、つまり昨日の出来事を閲覧しようとした時に違和感を覚えた。
この日だけで3ページも埋まっている。一体この日何があったのか…?
期待しながらページを捲ると、そこにはこう書かれていた。
『忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない、忘れたくない』
日常系ほのぼの作品にクソ重設定をぶち込みやがってぇ…(褒め言葉
物語の流れはほぼ原作通りだが、バックストーリーがストーリーだけにぼっちちゃんのモノローグが重い。
どんな体験をしても忘れてしまうだけに結束バンドの2人との初めての出会いは絶望的な感情もあった。でもこの出会いから絶望だけ残すよりも少しずつ希望を明日に託していく方向へぼっちちゃんが変化していく。
それでも「いいですか、ここからは落ち着いて読んでください 貴方はバイトをすることになりました」って昨日の自分にありえないようなことを突然託されるのは笑ってしまう。
執筆時点で8話、あとは原作のイベント+後日談で終わりのようなので折り返しは過ぎたあたりか。