勇者だって人間だ。(挨拶
非安価系やる夫スレ作品で、DQ1を原作とした作品ではあるが大まかな世界設定なんかを流用しているだけで細部は再現されていない。物語はラダトームが竜王に襲われ、炎上するところから始まる。
燃え盛るラダトームの城下町を見て、カイジ(賭博黙示録カイジ)は愕然としていた。
カイジは非常に幸運な男だった。ラダトームの兵士として勤めている彼は今日は非番。
今は近くの森に珍しい実がなる時期で、高値で売れるそれで一儲けしてから酒場で豪遊するのがカイジの楽しみだった。
森に出かけたカイジが耳に届いた騒音で振り向いた先にあったものが冒頭の光景である。
呆然と立ち尽くすカイジの近くに誰かが近づいてきた。
現れたのはカイジと同郷で、今日は城の警備を担当していた石田(賭博黙示録カイジ)と鎧を着込んだ女性。
彼女こそラダトームの騎士団を率いる王女ローラ姫(Fateシリーズよりアルトリア・ペンドラゴン)。
ローラ姫がカイジに話したことはラダトーム城が「竜王軍」を名乗る魔物たちに奇襲を受け陥落したという冗談のような事実だった。
どうしたらいいのか分からないカイジにローラ姫は「勇者」と会うことを話す。
曰く、以前勇者の子孫がラダトームに仕えていたことがあり、その者は亡くなっているが彼の血縁の者なら力を貸してくれるはずだ、と。
臆病なカイジはローラ姫の護衛に始めは難色を示していたが、勇者という言葉に心が惹かれて姫の護衛に就くことを決意。石田は家族が心配で一度城下町に戻ると言う。
地図を頼りに勇者に会いに行くと、そこには破壊された家の残骸とそこに佇む一人の女性(とある魔術の禁書目録より御坂美琴)がいた。
勇者に用があることを伝えると、女性は自分に着いてくるように言う。
半日ほど女性に着いて歩き、ようやく勇者の家に到着した。
…だが、そこにいたのはベッドに寝ている老人だった。
このベッドに寝ている老人が現勇者・やる夫で間違いない。
ところが勇者がローラ姫達を見るなり一言目に発した言葉は「ナカ出しさせてくださいおっ!子作り的な意味でぇぇ!!」だった…
えぇ…初対面の相手にそれはドン引きだよ…
しかし、やる夫は高齢ではあるが完全に痴呆症を発症しているとかそういうわけではない。むしろ姫達の後を追ってきた「竜王軍」の魔物を瞬時に倒してしまえる程の衰えていない戦闘力を持っている。
じゃあなんでそんな言動してるんだよ、というのはやる夫の甥のできる夫が死んでしまったことに起因する。
できる夫は勇者を継ごうと訓練を重ねていて、やる夫もできる夫を可愛がっていたができる夫が死んでしまった以上、勇者の後継者がいない。他の家族ももう死んでしまっている。
つまり、やる夫が姫にあんなことを言ったのは後継者問題を解決しなければならないという必死さの現れ。
だからって女の子に「ナカ出しさせてください」はねーよ…おかげでお前ガライの町出禁になってるじゃねぇか…
最初のノリで読んでいくとシリアスの皮を被ったコメディか…?とも思うかもしれないがほんのちょっとギャグ染みた描写が入っているだけでかなりシリアスな作品。
やる夫の考える「勇者の在り方」やローラ姫の心情など、DQをシリアスかつ綿密にするとこんな感じになるのか、と思える。
ちなみに各話タイトルが(n回目)第x話となっているが、n回目の方が掲載順で、第x話の方が時系列となっている。