焼いてかない?脳を(挨拶
ハーメルンで連載中のオリジナルファンタジー小説で、鬱ダークファンタジー漫画原作の異世界に転生した主人公が片目片足を失ってヒロインたちに激重感情を抱かれるお話。
仲間たちの悲鳴が聞こえる。うるさい。どっちが上でどっちが下かも分からない視界の中で、俺は寝返りを打つように身じろぎした。少し意識が飛んでいたようだ。
師匠が取り乱しているがこんなの、仲間を庇ってちょっと体を打っただけじゃないか。痛みだってほとんどない。
顔面にヌルっとした液体が流れていくのを感じて「ああ、ポーションか」なんて考えていたその時、未だに叫び続けている師匠の背後に鎌を振り上げる「敵」がいた。
我ながらよく反応できたもんだと思う。稲妻のように起き上がり、師匠の腕を引いてそのまま全力で後ろに飛んだ…つもりだったが師匠の腕を引いた時点でバランスが崩れ、俺の身の丈すら超えるふざけたデカさの鎌に顔の右を斬られることになった。
【摘命者(グリムリーパー)】。すでに踏破されたはずのダンジョンの真の最奥で待ち構えていた本当の主。遭遇すればSランクパーティですら壊滅を覚悟するという化け物。
俺はこいつを知っている。俺はこの展開を知っている。…俺たちはここで全滅する。
異世界転生して十七年、このダンジョンに入る前に思い出すべきだった。細緻なイラストと無慈悲なストーリーで俺の情緒を狂わせた腐れ外道ダークファンタジー漫画、その序盤で死ぬために登場したかのようなモブパーティ。
それが俺たちで今まさにその全滅イベントの真っ最中だ。
他の2人の仲間も戦える状態じゃない。どうあがいても、原作通りに詰み…そうでもないか。
ここには原作を…こいつの倒し方を知っている人間がいる。こいつの不死を貫く単純明快な倒し方を。
こいつさえ倒せば原作で俺たちをなぶり殺しにした魔物の群れが湧くこともなくなる。原作を覆せる。
命の使い道が決まった。剣を―
しかしまぁ、人生とは何がどうなるかわからないものである。
「いやじゃ!もう絶対、なにがあっても絶対に離さないからっ…!」
「先輩は何もしなくていんです、ぜーんぶわたしたちに任せてくださいっ」
「きっと気持ちいいから大丈夫。ボクにおまかせ」
死に物狂いで全滅エンドを回避した俺はどういうわけか生き延びていて、パーティが病んでいた。
やった!やったんだな!(脳を焼く
前から気になっていた男の子が自分のために命をかけて戦い、そして生き残っても剣士としての道は絶たれている…
そんなん責任を感じて病んじまうよ…!(歓喜
主人公としてはパーティ病み堕ちエンドなんて冗談ではないらしく、パーティメンバーには立ち直って欲しいようだが片目片足吹き飛ばされた想い人見てそれは無理あるで…
パーティの皆としては主人公の剣閃に惚れこんでいて、いずれ前人未到の領域まで辿り着くだろうと思っていた。それが失われたとなれば絶望もひとしお。
ちなみに主人公の剣術はこの洋風ファンタジー世界にない(またはあるがドマイナー?)「抜刀術」を幼少期から延々と鍛え続けてきたもの。せっかく摘命者との戦いの経験で扉を開き、覚醒の領域に足を踏み入れたのに片足失っちゃったねぇ(ニチャァ
本年8/30に書籍化したばかりのHOTな作品。出会うヤツの脳をドゥンドゥン焼こうじゃねぇか!
ハーメルン 全滅エンドを死に物狂いで回避した。パーティが病んだ。