ありえたかもしれない可能性(挨拶
ハーメルンで連載中のブルーアーカイブの二次創作小説で、現実世界からブルアカ世界に転移したオリ主が「ナニカアッタ」世界から来た生徒達と生きていく話。
肌寒さを感じながら目が覚めると、タブレット端末らしき物を抱えている俺は、路地裏のような場所に座り込んでいた。上を見上げれば夜空に浮かぶ星が綺麗に光輝き、月と共に大地を照らしている。
キラキラだ……いや、ニュータイプしてる場合じゃないか。
どこだここ?てかいつの間にか着替えられてる?てかなんだよこれ、白のスーツに青いネクタイって……こんな服持ってねぇし。
夢なら早く覚めてくれと思いながら立ち上がったとき、膝に乗っていたタブレットらしき端末が床に転がり落ちた。
「そういや持ってたなタブレット……いや俺タブレット持ってない筈だけど」
そう思いながら落としたタブレット端末を拾い上げたとき、電源が入ったのか、元から入っていたのか分からないが灰色のタブレット端末から発せられた光が地面を照らし始めた。
画面を確認すると、そこには真っ黒な背景に見覚えのある青い封筒が一枚表示されていた。
「これ、ブルアカのガチャ画面か?」
タブレット端末に表示されていたのは、有名なゲーム。ブルーアーカイブの画面であり、動画でもよく見る、いわゆるキャラクターを入手するためのガチャ画面が開かれていた。
ブルアカを始めての半年、欲しいキャラを引いて無課金で駆け抜けてきた。
錯覚の夢なら、推しに会いたいもんだ。
「アリスに会えたなら、きっと良い夢だろうな」
推しキャラの一人、ホーム画面の一番最初に設定している彼女の姿を思い浮かべ、クスリと笑いながら画面に表示されている青い封筒の枠をトンっと軽くタップした。
表示されている画面に何度もノイズが走り、封筒の中から一枚の灰色の紙が表示される。
──はい、その声に呼ばれる時を、ずっと待っていました──
見覚えの文章が表示された次の瞬間、タブレット端末を持つ俺の目の前に、画面で何度も見た推しである彼女がいた。
「勇者よ、光が貴方と共にあらんことを」
だけど、違う。目の前にいる彼女は俺の推しキャラ、ゲーム開発部の天童アリスじゃない。確かにミレニアムの制服を着ているし、背中には光の剣ことスーパーノヴァは背負っている。だが本来の瞳は青ではなく赤、そしてヘイローもまた青ではなく赤く光り彼女の頭上に輝くヘイロー。
「ケイ?」「ち、違います。私は……アリスはアリスです!ケイではありません!!」
これは「ナニカアッタ」セカイで生き残ってしまった生徒たちが、先生のなり損ないと共に正史ブルーアーカイブの世界を生きる物語。
ブルーアーカイブは一見華やかな学園ものに見えるが、その実美少女GTAなどと言われる程には過酷な世界観なのは有名な話。
特に先生の存在が起点なのかは不明だが、様々な可能性世界に分岐しているのもストーリー内で証明されている。
主人公の持っているタブレットはシッテムの箱に似ているが異なるもので、「ナニカアッタ」世界…つまるところバッドエンドを迎えた世界(?)で生き残った生徒を呼び出す力を持つ。
自身の存在理由に従って世界を滅ぼしたが、後に残った後悔に沈んだケイ。
エデン条約の事件でカズサを失い、学校すら辞めてしまったレイサ。
記憶を失って砂漠を彷徨い、カイザー理事に拾われたホシノ。
調印式の日の2発目の巡航ミサイルで家族を奪われ、万魔殿議長となりトリニティとの戦争を起こしたイブキ。
「あの時こうなっていたら」というのはまぁ言ってしまえば埒の明かない想像ではあるんだが、ブルアカの場合明確に見せつけてくるから厄介やねんな…
主人公は「先生」ではなく、彼もまた自分を大人になりきれていない「なりそこない」だと自認している。でもケイを皮切りに呼ばれた生徒達は彼を「先生」と呼ぶのでこの物語は彼が「先生」になる物語でもあるのかもしれない。
曇らせはいい…だがやはり晴らすのもセットでなければ。頑張るんだ「先生」。